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書誌データ

小説・エッセイ
カタログハウス
1992年 11月 発売
219P
9784905943075

「龍頭蛇尾」でもいいじゃないか

4

「終わりよければすべてよし」という言葉があり、「龍頭蛇尾」という言葉があるように、書物も映画も結末が大事である。

映画に話を限ってみても、名作の多くは印象的なラストシーンを持っている。『太陽がいっぱい』の、眼に痛いほど碧い海。『アラビアのロレンス』の、猛スピードで走り抜けてゆく軍用オートバイ。『七人の侍』の、風に吹かれる四本の刀。そして『第三の男』で、背筋を伸ばし昂然と並木道を歩み去っていくアリダ・ヴァリの姿。

それとは反対に、安手の映画ほど終盤がお粗末である。ストーリーに何の曲も無く、観客を置き去りにしたまま、唐突に映画は終わってしまう。煽情的な描写をもっぱらとし、ただ観客から金を搾り取るためだけに作られた低級な映画を、米国では「エクスプロイテーション」と呼ぶそうだが、間違ってこの手のシャシンを観てしまうと、画面に向かって「おーい待ってくれ!」と呼びかけたくなる。

ではあるのだが、この作品鑑賞の王道の逆を行く批評手法を確立(?)した人物がいる。本書の著者、佐藤圭である。本書の「まえがき」で佐藤は言う。宝島社の「このミステリーがすごい!」や文芸春秋の「週刊文春ミステリーベスト10」など、「権威ある」ランキングに名を連ねるミステリは、どうしてあんなに面白くないのか、と。

娯楽というミステリ本来の使命を忘れ、文学まがいの高級めかした社会批判や性格描写をもっぱらとする作品ばかりが評価される、いわばミステリの「優等生化」が進行しているのではないか。佐藤はそう言いたいのだろう。

この分野に詳しいわけでないから発言の資格はないが、近年直木賞のような「権威ある」文学賞が急速に一般読者の支持を失い、代わって「本屋大賞」が人気を集めていると言われる現状に鑑みれば、たしかに佐藤の指摘にも一理あるように思う。

あらゆる芸術には、発展するにつれ自己目的化するという、ある種の宿命のようなものがある。当初はただ読者を楽しませるために書かれていた小説が、いつの間にか「文学とは何ぞや」を追究するメタ小説に変貌し、同時に専門家ならざる一般の読者が離れていく。読み手の多くは、小難しいことを考えるために読書をしているわけではないからだ。ミステリの世界でも、これと同じ事態が進行しているのかもしれない。

そうした優等生的「名作」のアンチテーゼとして佐藤が打ち出すのが、本書の主題である「徹夜本」なる概念である。「徹夜本」の意味を字義どおりに解釈すれば、徹夜で読みあげてしまうような面白い本、ということになるが、佐藤がこの言葉に込めた含意はそれだけではない。

物語のまとまりや文学性を重視しすぎるところに、現代のミステリ作家が魅力的な謎やアイディアを提出できなくなった原因があるのではないか。およそ間然するところのないような、首尾の整った傑作でなくともよい。とりあえず読み手を期待でワクワクさせるアイディアと、序盤で読者を物語の世界に引き込む力があれば、仮に後半で少々失速してもいいではないか。そうしたミステリを「徹夜本」と呼ぼう。それが佐藤の批評作法である。

要するに、佐藤のいう「徹夜本」とは、映画の世界でなら「B級映画」とか「プログラム・ピクチュア」とか呼ばれる作品のことだと思えばいいだろう。本書は、そんな佐藤が選定した100冊の「徹夜本」を紹介するブック・ガイドである。

興を削ぐといけないので、取り上げられた個々の作品に言及するのは控えたいが、私もまったく聞いたことのない無名の「B級」作品から、『羊たちの沈黙』『ホッグ連続殺人』『ブラジルから来た少年』といった、すでに評価の定まった名作まで、ラインナップには個性の強い作品が並んでいる。ラインナップの詳細を知りたい向きは、私の本屋に特集の棚を作ったので、そちらをご覧いただきたい。

佐藤による推薦文も見事である。ハッタリを効かせた大仰な文章だが、何としてでも読ませようという熱意が行間から伝わってくる。これくらいでなければ読む気も起きないというものだ。主要な名作は皆読んでしまって、というすれっからしのミステリ・ファンにお薦めしたい、個性的なミステリ・ガイドである。

+5あり! +3あり! +1あり!
【 読了日: 】
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男女共通
引用文
「設定された事件の謎が突飛であればあるほど、その真相(トリック)はバカバカしいのが通例で、本書のトリックも実はとてもバカバカしい。しかし、一応、つじつまは合わせてあるのだから、うん、立派と拍手してあげるのが徹夜本ファンの心意気というもの。謎さえ面白ければ、真相の方はバカバカしくても許してしまうのかと眉をひそめる完全主義者はしょせん、徹夜本の世界には無縁の人なんだ。(『ワイルダー一家の失踪』解説より)」  (175P)
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