ブクレポ
ブクレポってどんなサイト?
login_header
新規登録(無料)
login_header
ようこそゲストさん 
  • ログイン
  • ブクレポとは?
  • ヘルプ
  • ホーム
  • 本をさがす
  • ブクレポをさがす
  • ユーザをさがす
ランピアンさん 
57 あり!
あり!
このブクレポを評価しよう!あり!とは?
+5あり! +5あり!を取り消す +5あり! +3あり! +3あり!を取り消す +3あり! +1あり! +1あり!を取り消す +1あり!
このブクレポにあり!した人
ブラック企業を撃て » « 「銀行問題」の真因
book_report_header

書誌データ

新書・文庫
早川書房
1983年 12月 発売
474P
9784150403423

裏切り者の孤独

5

私の幼少時、テレビの番組表にはアニメと特撮ドラマが目白押しで、数え切れないほど多くのヒーローが悪と闘っていた。

その中で最もカッコ良かったヒーローといえば、やはり「彼」に止めを刺す。地球の先住民たる悪魔族の先兵として、現生人類を鏖殺し地球を奪還する密命を帯びて人間界へ忍び込んだにも関わらず、人間の美少女を愛したために己が種族を裏切り、かつての仲間全てを敵に回して闘う破目になった悪魔、デビルマン。

裏切りが一般に罪だとされる以上、それを犯した者が魅力的というのも妙な話のようだが、難しい理屈など知らない子供心にもそう映ったのだから、そこにはそれなりの根拠があるはずだ。

それは恐らく、裏切り者こそ彼の所属する共同体から弾き出された究極の「個」だからだろう。人間は他の人間との絆を強く求める一方で、仲間から離れたいという離群の衝動をも持つ矛盾した存在だと述べたのは、渡辺京二だった。裏切り者に憧れる少年の心理は、渡辺の推測の正しさを裏書しているように思う。

人間社会にあって、かの悪魔と似た立場にいる「裏切り者」がスパイである。その社会に溶け込み、一見善良な市民として生活していながら、心の中ではもう一つの祖国のため、或いは己の理想のために同胞を裏切っている男。

そう、スパイもまた究極の「個」なのだ。そのためか、コンラッドやモームといった文豪、そして20世紀英国を代表する作家、本作の著者グレアム・グリーンも、スパイを主題とした作品を物している。

グリーンは第二次大戦中の一時期、英国の情報部に所属するスパイだった。1962年、かつて彼の上司だった辣腕情報部員が、実はKGBとの二重スパイであったという衝撃の事実が発覚する。西側世界を揺るがす醜聞となった「キム・フィルビー事件」である。本作は、グリーンが自らの経験と、そしてこの一大事件の経緯を踏まえて執筆した、スパイ小説の傑作である。

英国情報局の老スパイを主人公とする本書は、ジェームズ・ボンド譚のようなエンターテイメントではない。この物語の身上は、複雑化し個々の利害が錯綜する現代社会で、国家と理想、社会と家族、政治と個人との間で千々に引き裂かれる人間の魂を、的確な心理描写と見事な人物造形で描き出した点にある。

作中で何より胸を打つのは、主人公の背負った恐ろしいほどの孤独だ。祖国も、職業も、イデオロギーも、そして愛する家族も、彼の孤独を埋めることはできない。作品を読み進むうち、この主人公は現代社会に生きる我々自身の鏡像なのではないかと思えてくる。

だとすれば我々現代人は、もはや裏切り者同様の孤独を抱えて生きるしかないほど剥き出しの「個」になってしまったのかもしれない。本作の扉に掲げられたスパイ小説の鼻祖J・コンラッドの言葉が、それを端的に表現している。

「絆を求める者は敗れる。それは転落の病菌に蝕まれた証し。」
+5あり! +3あり! +1あり!
【 読了日: 】
おすすめしたい人
男女共通
引用文
「偏見には理想と共通する何かがある。コーネリアス・ミュラーは偏見を持つことがなく、それだけにまた、理想がなかった。」
タグ
book_report_footer

ブクレポの輪

ブクレポの輪とは?

このブクレポへコメント

 ランピアンさんのブクレポ

この角はなんのために
も~れつバンビ 1
4
あり!:55     コメント:0
猿にマシンガン
オレたち花のバブル組
4
あり!:55     コメント:0
ボクシングの技術革命
ボクシングは科学だ
5
あり!:45     コメント:0
だれかが風の中で
木枯し紋次郎 1
5
あり!:34     コメント:1

 この書籍のブクレポ

ブクレポはまだありません。

この書籍のブクレポを書いてみましょう!

  グレアムグリーンの書籍のブクレポ