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書誌データ

新書・文庫
岩波書店
1987年 04月 発売
608P
9784003253113

内容紹介

貧しさにたえかねて一片のパンを盗み、十九年を牢獄ですごさねばならなかったジャン・ヴァルジャン。出獄した彼は、ミリエル司教の館から銀の食器を盗み出すが、神のように慈悲ぶかい司教の温情を翻然として彼を目ざめさせる。原書挿絵二百枚を収載。

魂の覚醒

5

ミュージカル化されて世界的な大当たりをとり、今また映画化されて話題を集める、十九世紀フランスを代表する一大ロマンである。


たった一本のパンを盗んだために投獄され、人生の大半を牢獄で過ごした主人公ジャン・ヴァルジャンが、再び犯した罪を見逃してくれた一人の司教の真情に触れて悔改し、七月革命へと向かう動乱の中で、贖罪と自己犠牲の人生を歩む。この大作を評するに贅言は必要でないが、一つだけ私的な感想を書きつけておきたい。

当今のハリウッドには、主人公が開始早々画面に登場しない映画はヒットしないという愚劣な「法則」があるらしいが、本書の場合、待てど暮らせど主人公ヴァルジャンは紙上に姿を現さない。冒頭から100ページ以上にわたって延々と描かれるのは、後にヴァルジャンに改心の契機を与える司教、ミリエル氏の半生なのである。

本書の読破に挑戦したものの、この冒頭部分ですっかり退屈して投げ出した人も多いのではないかと思うが、実は一見本筋と無関係なこの挿話によってこそ、本書は文学史に残る傑作となりえたのである。なぜなら作者ユゴーにとって最大の難題は「いかにしてヴァルジャンを改心させるか」であり、彼の苦心も恐らくはそこにかかっていたからである。

本書がヨーロッパを舞台とする以上、人間に悔い改めを促すのは、むろん宗教の役目でなければならない。しかし旧体制下のキリスト教は事実上民衆を支配する道具であり、聖職者は支配層の一員として彼らを搾取する側に立っていた。つまり社会階級の上からはミリエルとヴァルジャンは敵同士なのであり、後者が前者の説教によって改心するなどという単純な筋立ては、まず成立しようがないのだ。

だからこそユゴーは、ミリエル司教をヴァルジャンの魂を震わせるに足る人物として造形しなければならず、克明で冗長なプロローグはそのためにこそ必要だったのである。ここで読者は、ミリエル氏が忠実な神の僕であり、信教を身分的特権と取り違えている世上の聖職者とは、全く次元の違う人物だと知ることになる。


その中でも印象的なエピソード、恐らく全篇を通じてもっとも感動的な場面は、かつて国民公会議員として大革命に身命を捧げながら、今は人々から「怪物」と忌み嫌われ、孤独な隠遁生活を送るある老革命家を、ミリエルが訪ねるくだりである。

無神論者の老革命家と司教ミリエルとの間には、当然のごとく神と革命をめぐる激しい論争が交わされる。だが、生命を賭けて民衆のために奔走しながら、同じ民衆によって無惨にも見捨てられ、今や従容として死を迎えんとするこの老革命家との対決によって、ミリエルの魂はある決定的な転回を経験する。

深い学識とキリストへの忠誠を兼ね備え、しかし社会の悪と矛盾から目を逸らすことなく、貧しい人々を愛し、自らと敵対する思想と世界観さえ容れる勇気を備えたこの人物ならでは、神からも見捨てられたヴァルジャンの孤独な魂を覚醒させることはできなかったであろう。老革命家によって目覚めさせられたミリエルの清冽な魂は、主人公ヴァルジャンへと引き継がれ、かくしてこの大河小説は一気に堰を切って流れ出す。あとはただお読みいただくだけである。

ただ、あの有名な序文はぜひ味読されるよう。念のために下に掲げておく。

「法律と風習とによって、ある永劫の社会的処罰が存在し、かくして人為的に地獄を文明のさなかにこしらえ、聖なる運命を世間的因果によって紛糾せしむる間は、すなわち、下層階級による男の失墜、飢餓による女の堕落、暗黒による子供の萎縮、それら時代の三つの問題が解決せられない間は、すなわち、ある方面において、社会的窒息が可能である間は、すなわち、言葉を換えて言えば、そしてなお一層広い見地よりすれば、地上に無知と悲惨とがある間は、本書のごとき性質の書物も、おそらく無益ではないであろう」

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引用文
「「私は自分の力に従って自分の義務を尽くし、自分のなしうる善をなした。しかる後に私は追われ、狩り出され、追跡され、迫害され、誹謗され、嘲笑され、侮辱され、のろわれ、人権を剥奪された。(中略)そして私はだれをも恨まずに、人より嫌悪せられた者の孤独を甘受している。今や私は八十六歳になっている。私はまさに死なんとしている。あなたは私に何を求めに来られたのか?」 「あなたの祝禱を。」 司教はひざまずいた。 」  (96P)
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