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書誌データ

ホビー・スポーツ
ベースボール・マガジン社
1986年 04月 発売
322P
9784583025520

ボクシングの技術革命

5

わが国は、今日まで多くの世界チャンピオンを輩出しているボクシング強豪国である。ボクシングが強い国というのは、ほとんどが歴史的にアメリカ文化の影響を強く受けてきた国家だ。メキシコ、キューバ、フィリピン、そして日本も然り。


だが、日本人ボクサーには一つの重大な弱点があることが、つとに専門家たちによって指摘されてきた。選手養成の過程で、もっぱら体力・精神面に重点が置かれるために、攻撃・防御両面にわたる合理的な技術が身に付いていないことだ。


矢尾板貞雄や小林弘といった技巧派ボクサーを世に送った名伯楽、中村信一は、かつてこう語ったという。「日本人のボクサーはパチンコのチューリップだ。打たれればガードが開く。(エデル)ジョフレは打たれると逆にガードを絞り、それ以上打たせなかった。」。


国内の試合ならともかく、世界クラスの強豪との対戦に勝つためには、相手のビッグ・パンチを終始外しきるだけの防御技術が必須となる。だが、観客へのアピールを最優先し、派手な打撃戦を良しとする日本ボクシング界の風潮が、もっぱら攻撃ばかりを賞揚し、防御技術をなおざりにする弊害を生んできたのだ。


こうした風潮に警鐘を鳴らし続けてきた人物がいる。世界屈指のボクシング研究家であり、プロモーターとして現在も活躍中であるジョー小泉だ。彼はなんと弱冠17歳で米国のボクシング雑誌『リング』の東洋地区通信員となって以来、一時期までは三菱重工業のエンジニアとの二足の草鞋を履きながら、活発な評論活動を展開してきた。


その旺盛な行動力は評論活動だけに留まらず、自らもトレーナーやセコンドとしてボクサーの育成に関与している。簡単な会話なら10か国語近くをこなすという卓抜した語学力を駆使し、膨大な古今の文献や試合映像の分析から構築された独自の科学的セオリーは、日本ボクシングのパラダイムを転換させたといっても過言ではない。


かつてはテレビ東京の解説者も務めていたが、その的確なコメントは、ただ選手の動きを追うだけの凡百の解説者連とは段違いの面白さだった。今は亡きノンフィクション・ライター、佐瀬稔とコンビでの名解説には、まだ十代だった私もすっかり魅せられたものである。


小泉の年来の主張が結実した主著の一つが本書『ボクシングは科学だ』である。ボクシング専門誌『ボクシングマガジン』の連載記事が基となっており、第一話「アゴを『かするパンチ』がこわいのはなぜだろう」から、第六十話「プロ・ボクシングの将来像―ある擁護論」まで、同誌に掲載されたコラムのうち、計六十本が本書に集約されている。


それまで、ボクシング技術について解説した著作といえば、教科書的な記述に終始する入門書の類しか存在しなかったのだが、本書において小泉は、パンチ、ディフェンス、フットワーク、トレーニング方法といった様々なトピックについて、従来の常識を覆す実践的かつ斬新な技術論を提示している。


例えば劈頭の「アゴを『かするパンチ』がこわいのはなぜだろう」だ。通常、ボクシングにおけるノックダウンとは、渾身の強打を相手の肉体に喰い込ませることで起こると考えられがちだが、実際にはこれとは逆のケース、すなわち軽く打ったようなパンチが顎をかすっただけで相手が倒れ、そのままKOとなるケースがままある。


これは周知の「梃子の原理」により、顎の先端すなわちチンに打撃を加えたほうが、アゴの根元部分を打つよりも、相手の脳に強い振動を与えることができるためだ。頭部やボディといった大雑把な区分ではなく、人体の急所の分布を理解し、個々の箇所を精確に打ち抜くことが重要なのである。


「シフト・ウェートの話」では、日本人ボクサーのパンチ力が海外選手のそれより劣るといわれる原因が、シフト・ウェート(体重移動)とフォロー・スルー(打ち抜き効果)への無理解にあると分析し、過去の名選手の事例を挙げてその重要性を強調している。


その他にも、「リズミカルなボクシングは疲れない」「長身選手にフックでリードするな」「ワン・ツーの『ワン』には目つぶし効果がある」「日本人ボクサーが打てないパンチについて」「高いガードはブロッキングじゃない」「ディフェンスにおける〝主〟と〝従〟」「インサイドから打つことの重要性」など、目から鱗が落ちる秀抜な技術論がずらりと並んでいる。


本書は出版から三十年を閲し、新刊書店ではもはや手に入らないが、今日でもボクシング選手のみならず、キックボクシングや総合格闘技の競技者にとっても有益な技術書となるだろう。


むろん、テレビのボクシング中継をもっと深く楽しみたい観戦者にとってもだ。かつて私が通った空手道場にも、本書の記述を拳拳服膺している道場生が幾人かいたことが、懐かしく思い出される。

小泉が日本ボクシング界にもたらした「ボクシングの技術革命」の影響を強く受けたとおぼしいのが、世界ジュニア・バンタム級チャンピオンだった渡辺二郎である。

日本人離れした防御技術と、インサイドから最小限のモーションで放たれるシャープなパンチで、多くの強豪を葬り去った渡辺のボクシングは、小泉の技術的アドバイスを受けて大きく開花した。


おそらく日本ボクシング史上最強の選手の一人だった渡辺は、引退後山口組系暴力団の一員となり、恐喝と銃刀法違反で二度逮捕されたことで、ボクシング界から永久追放処分となった。新聞の三面記事以外でその名を聞くことが絶えてなくなったのを、かつてのファンの一人として、衷心より惜しむものである。

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【 読了日: 】
引用文
「俗に「攻撃は最大の防御」という。この言葉ほど、ボクシング・コーチ法において誤解されているものはない。たまには積極果敢な攻撃、反撃が相手の攻撃を抑え込み、結果的に防御の役割を果たすことがある、しかし、攻撃を〝自分を守る盾〟にするのは、よほどパンチを出し続けなければならない。間断なくパンチを連続することで防御の代用にできたボクサーは、ファイティング原田くらいなものだ。」  (170P)
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