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書誌データ

小説・エッセイ
文藝春秋
2014年 10月 発売
364P
9784163901497

内容紹介

昭和五十九年、台風の夜。埼玉県浦和市で不動産会社経営の夫婦が殺された。浦和署の若手刑事・渡瀬は、ベテラン刑事の鳴海とコンビを組み、楠木青年への苛烈な聴取の結果、犯行の自白を得るが、楠木は、裁判で供述を一転。しかし、死刑が確定し、楠木は獄中で自殺してしまう。事件から五年後の平成元年の冬。管内で発生した窃盗事件をきっかけに、渡瀬は、昭和五十九年の強盗殺人の真犯人が他にいる可能性に気づく。渡瀬は、警察内部の激しい妨害と戦いながら、過去の事件を洗い直していくが...。中山ファンにはおなじみの渡瀬警部が「刑事の鬼」になるまでの前日譚。『どんでん返しの帝王』の異名をとる中山七里が、満を持して「司法制度」と「冤罪」という、大きなテーマに挑む。

冤罪事件の波紋

4

昭和59年、台風で大雨が降っていた夜、埼玉県浦和市(現在のさいたま市)の、ホテル街の中にポツンと建つ、不動産屋の夫婦の死体が発見される。金庫の中の現金が盗まれていたので、警察は、強盗殺人事件として捜査を始めた。その不動産屋は、裏で、違法な高利貸をしていたことが判明し、警察は、お金を借りていた客の中に犯人がいるのではないかと考えた。


そして、容疑者が逮捕される。逮捕されたのは、楠木明大(あきひろ)・25歳。金庫から、彼の指紋が検出されたのと、犯行に使われた道具を、かつての職場から持ち出せたこと、殺された不動産屋の久留間が、職場に、執拗に催促の電話をかけてきたことが、クビになった原因だと思いこんで、被害者を恨んでいたことなどが、逮捕の理由なのだが、決め手に欠けていた。


取り調べをしたのは、浦和署のベテラン刑事・鳴海と、若手の渡瀬。鳴海が「脅し」、渡瀬が「宥め」という役割分担で取り調べを行った。しかし、その内容は、長時間、食事も与えず、眠ることも許さず、暴行もありという、今だったら、絶対に問題になるようなものだったのだ。鳴海に痛めつけられ、朦朧としている楠木に、渡瀬がささやく。「自供してしまえば、楽になれますよ。無実は、裁判で訴えればいい」「自供すれば、オフクロさんに会えますよ」


さらに、鳴海は、決定的な証拠物件を探し出す。渡瀬の、“悪魔のささやき”にそそのかされ、無実を訴えていた楠木は、自供に至った。


楠木は、裁判の場で、無実を訴えたものの、担当した当番弁護士が、全くやる気がなかったのも災いし、死刑判決が確定してしまう。そして彼は、その後、獄中で自殺してしまったのだ。


それから5年後。管内で、窃盗事件が発生する。犯人が逮捕されたのだが、渡瀬は、同時期に発生した強盗殺人事件との共通点に気付く。犯人の迫水は、犯行を認めたのだが、渡瀬は、5年前の事件も、迫水の犯行なのではないかと疑う。調べてみると、5年前の事件で、決定的な証拠となったものは、鳴海の捏造だったことが明らかになる。そして、司法と警察を巻き込む、一大スキャンダルが発覚してしまったのだ・・・


その冤罪事件が、どれほどの打撃を与えるかがわかる渡瀬は、自分の進むべき道に思い悩む。そして、尊敬する検事の恩田や、楠木の裁判を担当した高遠寺静などに相談し、決意を固めるのだった。


楠木の事件に関わった警察官・検事・裁判官、全てが処分を受ける。無事だったのは渡瀬のみである(鳴海は、すでに退職)。その後、県警の捜査一課に配属された渡瀬だが、周囲の風当たりが強いのは当然である。


それから23年後、無期懲役の判決を受けて服役していた迫水は、仮釈放される。ところが、出所直後に、何者かに刺殺されてしまう。当然警察は、23年前の事件との関連を疑う。独自に調査をしていた渡瀬は、事件の被害者たちに、何者かから、迫水の出所日を知らせる手紙が届いていたということを聞き出す。そして、この刺殺事件の裏には、とんでもない悪が潜んでいることが明らかになるのだ・・・


冤罪事件の波紋の大きさには、驚きと恐ろしさを感じた。渡瀬は、警察の隠蔽体質の犠牲となり、妻にも逃げられてしまった。担当検事や裁判官は、事件とは全く関係ない、プライベートを暴かれてしまう。殺人犯扱いされた楠木の両親は、職を失い、妻は精神に異常をきたしたしまった。そして、楠木の父親に責められた渡瀬は、二度と同じ過ちをおかさないことを、強く心に誓うのだった。


以前読んだ、「テミスの求刑(http://bookrepo.com/book/show/2875931)」という作品でも登場した『テミス』。ギリシャ神話に出てくる、正義の女神であり、大抵の裁判所に飾られている、司法の公正さの象徴である。右手には剣が握られていて、権力を表している。左手の天秤は、正義を意味する。


人を裁くという行為は、神の代行をすることに他ならない。しかし、人間は神ではない。テミスの剣は、法を執行した者たちに向けられたのだ。


この作品、中山作品ではおなじみの、渡瀬警部が、なぜ、『刑事の鬼』になったのかがわかるとともに、「静おばあちゃん」こと高遠寺静の現役時代の姿を知ることもできるという、大サービスである。


無実の人間を死に至らしめてしまった苦悩が伝わってくる作品だった。そして、衝撃の結末は、さすが、中山さんという感じである。読みごたえ十分の作品だった。


中山さん、作曲家の次は、ギリシャ神話の神様路線だろうか。



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