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書誌データ

コミック
講談社
2009年 11月 発売
--
9784063618433

この角はなんのために

4

(このレポは本作の1~5巻を通して評したものである。)

沖縄への転勤から約一か月がたったころ、新しい職場の同僚から、沖縄の伝統芸能である闘牛の観戦に誘われた。沖縄闘牛界最大のイベントである「夏の全島大会」が開催されるので、観戦に行かないかというお誘いである。

闘牛といえばスペインだが、日本でも沖縄を始め岩手や新潟、隠岐島、愛媛の宇和島、徳之島などで今も闘牛が行われている。ただし、日本における闘牛とは、スペインのように牛と人間との闘いではなく、牛VS牛、牡牛同士が文字通り角を突き合わせ、一方が戦意を失って敗走するまで闘うのである。

私を誘ってくれた年長の同僚は、もちろん沖縄出身で、沖縄の伝統文化を県外人にも伝えたいという熱意の持ち主だから、ありがたく誘いをお受けすることにした。実は以前から興味はあったのだが、観客はほとんどが地元の人、しかも闘牛自体が賭け(無論ヤミの)の対象になっていると聞いていたので、出かけるのを躊躇していたのである。

当日は車にスーパーで買ったビールや食事を積み込み、うるま市まで高速で30分程度のドライブ、本日の会場である「石川多目的ドーム」に到着した。

会場に入ってみると、すり鉢状になったコンクリ打ちっぱなしの観客席の中央に、土が敷かれた文字通り円形のリングが設えられており、どう見ても闘牛以外の用途に使えるとは思えない構造である。一体この施設のどこが「多目的」なのかと突っ込みを入れたくなるが、この辺には何らかの「大人の事情」が介在しているのだろう。

試合が始まっていささか驚いた。関係者には失礼ながら所詮は動物のこと、戦意のない二頭の牛を無理やりけしかけて「闘牛」に仕立てているのではないかと疑っていたのだが、牡牛の闘争本能は予想以上に凄まじかった。

それぞれの牛の側には「闘牛士」が一人付き、大きな掛け声で戦意を掻き立てるのだが、中にはそんな細工も必要なく、リング入場とともに相手に突きかかっていく牛もあるほど、初戦から激しい闘いが展開されたのである。

なかでも強さが際立っていたのが、沖縄全島中量級無敗のチャンピオン「闘将ハヤテ」号である。戦闘意欲がとにかく旺盛で、大きく角度の開いた角を用いたカケ(角を相手の角にかけ、首をひねる技)からの押しで敵を圧倒し、時間はかかったものの、ほぼワンサイドで勝利した。

観終わってみると、心配していたような大きな怪我や派手な流血沙汰もなく、闘い終えた牛をねぎらうオーナーとその家族との、ローカルでアットホームな光景もいい。すっかり闘牛ファンになってしまった。

それからしばらくして、職場の後輩が、闘牛をテーマにしたマンガが刊行されていると教えてくれた。地味でローカルな闘牛がマンガになるとは思えないから、大方観光振興のためのタイアップ商品だろうと思ったら、あにはからんや講談社の「週刊ヤングマガジン」に連載された、れっきとした作品だという。

古書で入手したという現物を貸してくれたので、早速読んでみたのが本書『も~れつ!バンビ』だが、これがなかなかの力作である。著者である柏木ハルコの名に聞き覚えがあると思ったら、生活保護をテーマとした新作『健康で文化的な最低限度の生活』が一部メディアで取り上げられ、注目を浴びている個性派だ。面白いのも道理だった。

ちなみに本作の主人公は人間ではなく、タイトルロールである闘牛「猛烈バンビ」号である。すなわち、牛が人間同様(或いはそれ以上)に思考し、(心の声で)しゃべるというシュールな物語が展開するため、以下はその点を念頭に置いて読んでいただきたい。

とある南の島の牧場に生まれた一頭の仔牛。将来はブランド肉牛として食卓に上ることを運命づけられていた彼を、ある日突然、稲妻のごとくある想念が襲う。「オレの人生は、これでいいのか⁉」「他にも違う生き方があるんじゃないのか⁉」

いずれは食われてしまう。その絶望的な運命を自覚した仔牛は、矢も楯もたまらず牧場から脱走を図るが、あえなく失敗する。だが、その光景を見ていた一人の人間の少女が、彼の運命を変えた。少女の願いを容れて、その父が仔牛を買い取り、自分たちが住む島に連れ帰ったのだ。

その島、煌之島(きらのしま)は、現在も闘牛が盛んに行われている地域であり、仔牛はその少女、宝田日和に素質を見込まれ、闘牛として育てられるべく島に連れて来られたのだった。日和は、愛らしい容貌を持つその仔牛に「猛烈バンビ」の名を与える。

だが、バンビが生まれて初めて目にする闘牛、それはあまりに衝撃的な光景だった。二頭の巨大で頑健な牡牛が、鋭い角を武器に渡り合う血みどろの闘い。闘いの結果死ぬことがありうるだけでなく、深手を負って敗れれば、たとえ生き残っても「処分」されてしまうこともある。

ようやくバンビは、己の新たな運命を知った。闘いに勝ち続けて生き残るか、もしくは一敗地に塗れて死ぬか。食肉になることを拒否したバンビの目の前には、それより過酷な二つの道しか開けていなかった。もはや後戻りはできないのだ。トレーナーである日和の無手勝流のスパルタ教育に耐え、強くなるため、生き残るための孤独な闘いを開始するバンビ。

だが、生来臆病な自分が、闘牛としての過酷な道を歩み通せるのか。闘いの日々の中、自分の選択は正しかったのかと自問自答するバンビの脳裏に、かつて故郷の牧場でバンビを「兄」と慕っていた幼い仔牛の言葉が去来する。「兄やん、ボクらの角は、なんのために付いているのかなあ~?」

なんのため――そう、闘うためだ。狭い牛舎の中でただ死を待つだけの人(牛)生より、闘いの中に斃れることを選んだ己の決断を信じつつ、バンビはライバルとなる強豪たちと激闘を繰り広げていく――。

読んでお分かりのとおり、本作は日本マンガのお家芸であるスポ根マンガ、格闘マンガの動物版である(ちなみに、根が暗い私があらすじを書くと必要以上に深刻な印象を受けるだろうが、実際の作品はもっとコミカルに進行する)。

粗暴で八方破れだが、実は幼い日に受けたトラウマに苦しみ、弱い自分からの脱却をバンビの闘いに仮託している日和と、命の恩人である日和に義理を感じながらも、その精神主義一辺倒で場当たり的な指導法に不安を拭えないバンビ。登場人物の性格設定がユニークで、従来のスポーツ根性ものとは一味違った、複雑な物語が展開する。

ただ、幼時からこの手のものに親しんできた私としては、生来気弱で格闘に不向きなはずのバンビが強くなっていくという物語の展開に、合理的・技術的な根拠が欲しかったところではある。映画『ロッキー』の主人公が、サウスポーであるがゆえに優位に立てたように。だがこれも瑕瑾にすぎない。

発行巻数と、終盤のやや性急な筋の運びからして、本作の連載はおそらく事実上の打ち切りに遭ったのだろうと思われるが、むしろ闘牛という、どう考えても現代人に受けそうにないテーマを扱って、単行本5巻分も連載を保たせたという事実が、却って著者の凡手でないことを感じさせる。

幼い日に動物アニメに涙した方、今後観光地で闘牛を観戦する予定のある方には、ぜひ一読をお勧めしたい。


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