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書誌データ

新書・文庫
文藝春秋
2010年 12月 発売
367P
9784167728045

内容紹介

「バブル入社組」世代の苦悩と闘いを鮮やかに描く。巨額損失を出した一族経営の老舗ホテルの再建を押し付けられた、東京中央銀行の半沢直樹。銀行内部の見えざる敵の暗躍、金融庁の「最強のボスキャラ」との対決、出向先での執拗ないじめ。四面楚歌の状況で、絶対に負けられない男達の一発逆転はあるのか。

おすすめポイント

驚異の高視聴率を記録!TBS系ドラマ『半沢直樹』の原作シリーズ第2弾!

猿にマシンガン

4

「猿にマシンガン」という言葉がある。フリッパーズ・ギターの楽曲の題名ではない。銀行関係者ならご存じだろうが、これは開明派の財務金融官僚として知られた大森泰人が、国家権力を笠に着て銀行の融資を強引に不良債権に認定しようとする金融庁の検査官を、使い方も知らない危険な武器を振り回す猿に喩えて、当時の強硬一点張りの金融行政を揶揄した言である。


今を遡ることおよそ十数年前、当時金融庁の課長職にあった大森が、庁内の喫煙所で一服していると、若手の検査官が同僚に向かって、「机叩いてでかい声出したら、ハケ(破綻懸念先)に落ちたぜ」と手柄顔に語る声が聞こえてきた。大森は内心「やれやれ、猿にマシンガン持たせて野に放ってるようなもんだな」と嘆息したのだという。


解説が必要だろう。金融庁による銀行検査においては、融資先の企業を返済可能性の高い順に➀正常先、➁要注意先、➂破綻懸念先、➃実質破綻先、➄破綻先、の5つの区分に分類する「資産査定」がメインイベントとなるが、この資産査定で破綻懸念先以下に区分されてしまうと、多額の引当金を積まねばならぬ上、その企業に対しては原則として追加融資ができなくなってしまうのである。


世間には、「銀行は雨降りに傘を取り上げる」という俗諺を真に受けて、銀行は経営の傾いた企業をすぐに見限ると非難する向きがあるが、銀行も救える会社は救おうとするものである。それは銀行員も人の子という感情論とは別に、企業は破綻させるより再建した方がコストが少なく済む場合が多いからだ。だが、救済には追加融資が必要、破綻懸念に分類されれば、それも叶わないことになる。


このため、往々にして検査の現場では、「要注意先か破綻懸念先か」を巡って、検査官と銀行の担当者との間で、とりわけ激しい議論が交わされることがある。融資を打ち切りにしないため、何とか要注意先に留めようとする銀行側の執拗な粘りに業を煮やした検査官が、威迫的な態度で銀行に査定変更を迫ることもあるとされる。


前出の若手検査官が口にした「机叩いてでかい声出したら」とは、そういうことであった。本来ならば銀行の主張を十分に聴き、双方向の理性的な議論の末に納得づくで結論が出されるべきところ、お上の威光という「マシンガン」を持ち出して銀行を屈服させる。身内とはいえ、そして若気の至りとはいえ、行政官にあるまじきその安易な姿勢を、大森は許せなかったのである。


「猿にマシンガン」とは、自身金融庁の高官であった大森にとって自戒の言葉でもあったわけだが、むろん検査官たちの側にも言い分はあった。平成金融危機のさなかには、邦銀が甘い査定で不良債権を過少に見積もり、利益を操作しているとの風評が国際社会に広がった結果、日本経済が破綻に瀕しているのではとの憶測が広がり、日本企業の海外でのビジネスにも支障が出かねない事態が出来していた。


かかる懸念を打ち消すためにも、まずは邦銀が抱える不良債権の規模を明らかにすべく、金融検査官たちは問題融資先のあぶり出しに躍起となり、銀行との対決姿勢を強めていったのだが、こうした金融当局の強硬な姿勢がまた銀行側の反発を呼び、双方の間に生じた疑心暗鬼によって、更にまた金融庁検査が厳しいものになるという悪循環が生まれていったのだ。なんとも不幸な時代であった。


そうした銀行と金融庁との相克をテーマにしたのが、テレビドラマの大ヒットにより著者の代表作となった半沢直樹シリーズの第二弾『オレたち花のバブル組』である。


前作で行内の不正をめぐり展開された暗闘に勝利し、東京中央銀行屈指の花形ポストである本店営業第二部の次長となった半沢直樹に、またも災厄が降りかかる。業界屈指の名門でありながら経営不振にあえぐ大口融資先、伊勢島ホテルの担当を法人部から引き継ぐよう、頭取直々の命令が下ったのだ。


業績が低迷を続ける伊勢島ホテルは、経営再建の途上にあったが、再建計画は軌道に乗っていると信じた法人部の担当者は、今期の黒字確保を前提に200億円の融資を実行したばかりであった。ところが、その矢先、同社が有価証券の運用失敗で120億円もの損失を出し、今決算での赤字転落が確実な情勢であることが発覚する。


しかも悪いことに、伊勢島ホテルから同様に融資の申し込みを受けたライバル銀行は、いち早く運用失敗の事実に気付き、融資を謝絶していたのである。東京中央銀行だけが、この損失の発生を見抜けず、同社に巨額の融資を行ってしまったのだ。法人部の大失態である。


このままでは、目前に迫った金融庁検査で伊勢島ホテルが槍玉に挙げられるのは確実だった。仮に同社が破綻懸念先に分類されてしまえば、ホテル経営が行き詰まるのみならず、銀行自身も数千億円の引当金の積み増しを迫られ、頭取の首が危うくなる。この危機的な状況を打開すべく、半沢に白羽の矢が立ったのである。


だが、金融庁の担当検査官は、その強引な検査手法で多くの銀行に融資の査定変更を迫り、多額の不良債権額処理を余儀なくさせて業界の顰蹙を買っている男、黒崎俊一であった。ホテルの再建に目処を付けるためにも、半沢はまず黒崎との論戦に勝利しなければならなかった。


伊勢島ホテルを正常債権とする論拠を得るため、半沢は同社の元経理部長である戸越らの協力を得て、伊勢島ホテルの経営状況についての調査を開始する。そもそも、なぜ法人部は運用失敗の事実を見抜けなかったのか。


そうして伊勢島の内情に分け入るうち、半沢はホテルの経営を巡ってある陰謀が進行中であることを突き止める。同社を真に立ち直らせるためには、その危険な闇と真っ向から対決するしかない。果たして半沢は黒崎検査官の執拗な追及をかわし、伊勢島ホテルを再生に導くことができるのか――。


シリーズ第二作となる本書だが、ほろ苦い結末にも関わらず、前作よりも読後感が爽快なのは、今回の半沢の戦いには、マシンガンを持った猿、すなわち権威を笠に着た横暴な検査官から取引先を守るという大義名分があるからだろう。


金融庁検査をめぐる半沢の奮闘と並行して、ままならぬ仕事のストレスから精神を病み、取引先の中小企業に出向させられた半沢の同期、近藤の孤独な闘いが描かれる。


ドラマでは滝藤賢一が好演した近藤だが、半沢のそれとは規模こそ違え、取引先企業の再生のために奔走し、その過程で銀行員としての誇りを取り戻していく彼の姿が、半沢の活躍以上に強い印象を残す。


銀行員の業務は単に企業に金を貸すだけではない。雨降りに傘を貸す、すなわち独力では前途を打開できない取引先を助け、経営を軌道に乗せること、そして時には経営者にシビアな決断を迫ることも、銀行マンの重要な責務といっていい。日本経済に本格的な回復の兆しが見えない中、銀行マン諸氏には一層の奮起を期待したいものである。


なお、付言しておくが、同庁創設以来の改革派として注目を浴びる現長官、森信親の英断により、金融庁は先年、今後は個別企業に対する資産査定を、原則として実施しない旨を正式に決定した。よって、半沢たちを苦しめたような苛烈な銀行検査は、現在ではもう行われていない。

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