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書誌データ

コミック
講談社
2010年 09月 発売
--
9784063729436

おすすめポイント

竹内結子主演!日本テレビ系・新ドラマ「ダンダリン 労働基準監督官」原作コミック!

ブラック企業を撃て

3

そういえば、全く意識せずに過ぎてしまったが、3月31日は〝プレミアム・フライデー〟だった。「働き方改革」の一環として政府が打ち出したキャンペーンだが、これが早くも悪評芬々なのである。

サラリーマンに早く帰宅されたら飲み屋は商売あがったりという穿った意見もあるが、やはり大勢を占めるのは、(当日は年度末でもあり)早帰りしたくとも忙しくてとうてい無理だ、政府は職場の現実を理解しているのか、という抗議というか悲鳴である。

だが、政府もその辺の事情は理解しているのである。いや、明確に理解しているからこそ、こんな姑息な策しか打ち出せないのだ。つまるところ、サラリーマンの残業を減らすには日本企業が終身雇用を止め、欧米型の雇用体系に移行するしかないのだが、それを口に出すと国民の猛反発を喰って政権が倒れかねないからである。

しかし、国民が政府の思惑を理解できないのも無理はない。そもそも長時間労働が日本型終身雇用の必然的な副産物だという事実を理解していた者は、識者の
中にさえ少なかったのだ。「辛口」評論家の佐高信は、会社の言いなりに働く日本のサラリーマンを「社畜」と罵ってきたが、彼がこうした基本的な知識を持っていたかは甚だ疑問である。

ゆえに、政府による対策は弥縫策とならざるをえない。そして、政府が掲げる今一つの弥縫策が労働基準監督署による取締りの厳格化である。弥縫策呼ばわりは失礼かもしれないが、監督署の深刻な人手不足は以前から度々指摘されてきたのだから、取締り強化が決定打たりえぬのはむしろ当然だろう。

労働基準監督官――事業所における労働諸法の遵守状況を監督し、違反者への捜査・逮捕権も有する特別司法警察職員として〝労働Gメン〟とも呼ばれる国家公務員である。労働者に極めて身近な存在でありながら、その実像が殆ど知られていない彼らを主人公とする、珍しいマンガがある。本書『ダンダリン一〇一』である。

〝ダンダリン〟とは、タイトル・ロールである女性労働基準監督官、段田凛のこと。監督官になって6年目のアラサーで独身、痩せぎすの短髪、メガネの下に鋭い眼光、帰宅すれば缶詰を肴に独り焼酎をあおる、およそヒロインという言葉が似つかわしくない主人公だ。

直言直行で猪突猛進、融通が利かず周囲の空気も読めない「KY」で、上司や同僚たちと衝突を繰り返す。だが、その正義感と使命感は群を抜き、妥協を知らぬ愚直さと持ち前の正義感で、悪質な違反者に対しては、煩瑣な手続きゆえ同僚たちが避けたがる逮捕・送検さえ厭わない。本書には、ダンダリンの奮闘を描く6つのエピソードが収められている。

芸南労働基準監督署に異動となったダンダリンは、初出勤の途上で自動車事故の巻き添えを食ってしまう。居眠りしていたという男の疲弊しきった様子が気にかかる彼女だが、その件にはすでに先任監督官の土手山が目を付けていた。功を焦る土手山と対立しつつ内偵を進めた結果、男の居眠りの原因は、彼が勤めるリフォーム会社での過酷なノルマ営業にあったことが浮かび上がる。

しかもその会社は、リストラで失業した者たちを積極的に雇うはいいが、過大なノルマを課して自腹でのリフォーム契約を余儀なくさせた挙句、ノルマ未達成を口実にいびり出す悪徳業者だった。労基署の臨検さえ拒否する悪質さに憤激したダンダリンは、監督官の伝家の宝刀たる逮捕権行使を上司に進言するが、それには乗り越えねばならぬ幾つもの壁があった――(「労働基準監督官の権限」)。

大学の同窓会に出席したダンダリンは、ゼミの先輩である野々宮真貴と再会する。学生時代からキャリア志向だった真貴は、赤字続きの家業の定食屋を見事に再建し、小規模ながら餃子チェーンを展開する経営者となっていた。旧交を温め、苦労人の真貴に敬愛の念を抱くダンダリン。

だが、それは真貴の表の顔にすぎなかった。現実の彼女は会社の資金繰りに苦しみ、社員にそのしわ寄せをするブラック経営者になり果てていた。彼女は肩書だけで実体のない「名ばかり管理職」を多数設置し、超過勤務手当を大幅に誤魔化していたのだ。友情と任務の板挟みになるダンダリンは――(「管理監督者の範囲」)。

いわゆる「お仕事マンガ」であるが、原作者であるとんたにたかしこと田島隆は、行政書士を主人公としたマンガ『カバチタレ!』の原作者だけに、プロフェッショナルな職業人の生態と哀歓とがリアルに描かれていて、ずっしりと読みごたえがある。

だが、再読したくなるかというと疑問符が付くのは、物語のトーンが単調で陰鬱であるのと、主人公ダンダリンら登場人物たちが魅力に乏しいためだろう。『ナニワ金融道』のような巧まざるユーモアでもあればいいのだろうが、ヒロインは常に眉根を寄せていて、仲間たちとの友情や交歓の描写も少ないため、キャラクターに感情移入がしにくいのである。

しかし、考えさせられる問題を扱っていることは疑いない。それは、ダンダリンの猪突猛進が浮き彫りにする日本の役所の「事なかれ主義」、特にマスコミや国民のクレームを恐れる余り、違法行為に対し及び腰であることだ。権力の行使は抑制的であるべきだから一概に悪いといえないが、諸外国では法違反など非違事例への対応が日本より遙かに厳格であるように思われるのである。

米国のロースクールを卒業した人から聞いた話だが、アメリカの経営者の間には「IRS(内国歳入庁)には絶対に逆らうな」という不文律があるそうだ。IRSは日本でいう国税庁だが、多少無茶な追徴をされても、異議申立や行政訴訟はせず泣き寝入りしろ、さもないと後日必ず報復される、別件を挙げられ「GO TO JAIL(刑務所行き)」だというのだ。


それへの賛否はともかく、非違事例に対するかの国の政府の断固たる姿勢は、ルール社会、訴訟社会に移行しつつある日本でも参考となりうるだろう。ことにブラック企業が社会問題化する現在、労働基準法違反で逮捕、起訴されても軽微な罰金刑で済んでしまう現行の運用は改め、悪質な違反は即座に該社の倒産となりかねないような厳格な処罰をすべきではないだろうか。

従来労基法違反に対して政府が寛容だったのは、雇用慣行が硬直的で、しかも企業が実質的な社会福祉の機能を担っている日本では、厳罰により企業が倒産すれば社員は路頭に迷い、保護すべき労働者の福利が却って損なわれる恐れが高かったからだ。

ところが、今後の日本では人口減少による空前の人手不足経済が現出するのである。労働移動を支援する仕組みを充実させれば、ブラック企業を倒産させても長期間の失業などの社会的損失は少なくなるだろう。

そもそも、本書に登場するような経営者たちが違法行為に走るのは、該社の生産性が低く賃上げや新規雇用ができないためだ。それは彼らが経営者として無能であるという以上に、政府の中小企業保護政策の結果、地域経済において企業の過当競争が発生しているせいである。

ならば、冨山和彦が主張するようにブラック企業はむしろ積極的に倒産させ、従業員を含む経営資源をより大規模で優良な同業他社に吸収させることで、過剰な競争を抑制すべきだろう。そのためにも、労働基準監督官に今以上の活躍の場を与えるべきではないか。

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このブクレポへコメント

p-mamaさんがこのブクレポにコメントしました

p-mama
p-mamaさん2017-04-24 21:40:16

これは竹内結子主演でドラマになりましたね。確かあの時の裏番組が「リーガルハイ」。話の内容はなかなかいいドラマだったのに、すっかり堺雅人に食われてしまって、勿体無いなぁと思った記憶があります。
ドラマでもダンダリンに感情移入できなくて、んんん?と思っていたのですが、なるほど原作がそうなのですね。
一番ブラックな公務員が労基だ、なんていう笑えない話があるくらいだから、この問題は奥が深すぎる・・・

ランピアン
ランピアンさん2017-04-24 22:09:12

おっしゃるとおり、裏番組が強かったんですね。硬派のドラマなのに、ちょっと惜しいことをしました。ドラマはかなり明るいストーリーになっていましたが、それでも癇に障るヒロインではあるんですね。

そうですね、公務員自身が典型的な日本型終身雇用、役所は長時間労働の温床ですから、根が深い問題ですね。

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