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書誌データ

小説・エッセイ
幻冬舎
2016年 09月 発売
507P
9784344030039

内容紹介

私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。著者渾身、文句なしの最高傑作!

神に愛でされし

4

当初は読む予定をしてなかったのだけど、本好きの同僚が借りて読んだら面白かったのでどうぞ、と薦めてくれて、読むことになった。


ピアノ・コンクールに挑む4人(栄伝亜夜:アーちゃん、マサル・C・レヴィ=アナトール、風間塵、高島明石)を中心に、オーディションから本選までの長い長い戦いが描かれている。


2段組み500ページ越え、なのでボケっとしてはいられないと(借りたものなので返却期限というものがあるのだ)毎日の読書目標を定めて今回は読んでみた。


クラシック音楽は好きだけど、ピアノ曲は積極的には聴かない(いちばん聴かないジャンルかも?)。ショパンも聴いた曲はいくつもあるけど、それが即興曲なのか練習曲なのか、はたまたバラードなのか前奏曲なのかも不明という体たらくだから、この本に出てくる曲のタイトルと音とが一致するのは四分の一もないかもしれない(幻冬舎のこの本のサイトから特設サイトに飛ぶと、各予選と本選のプレイリストがあるので、参考になる)。

第1次予選の課題曲であるバッハの平均律クラヴィーア曲集にしても、第1巻第1曲はよく知っているが、第2曲になるとすぐには浮かんでこなかったりする。モーツァルトのソナタ第12番のあの有名な旋律、と言われてもなぁ、と確認してみたら「なんだ」と聞いたことがあったりする。ベートーヴェンのソナタだって、ニックネーム付はそこそこわかるけど、第3番のソナタって、実は聴いたことがない。

ああ、曲を知ってたら良かったなぁ、その方が面白いだろうなぁ、と感じたのは、ジェニファ・チャンという女性コンテスタントがショパンの「英雄ポロネーズ」(この曲ならわかる)を弾いたのだけど、聴いていたアーちゃんが「この人らしい選曲だし、演奏だ」というくだりで納得することができたからだ。


ストーリーはまーちさんのレポをご参考に、といつもながらのズボラ・ムーミンとなって、全然関係のない感想をちょっとだけ(ちょっとが長いのもいつものことだけど)。


この本では各曲が「ピアノ・ソナタ第○番」とか、ニックネーム付きの曲なら「月光」などと表記されていて(「月光」とはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番)、シロウトのワタシなどには実に分かりやすい。評論家の大先生など「ベートーヴェンの嬰ハ短調のソナタは」とか「モーツァルトのヘ長調ソナタはねぇ」などとのたまわれるので、それってどの曲? となってしまうのだが、それは避けられるので嬉しかったりする。

各曲の少し細かいつかみ、それを各コンテスタントがどう演奏するか、などもうまく表現されていて、その曲を聴いてみたくなる。今回特に聴いてみたいと思った曲は、バルトークというハンガリー(後にアメリカに亡命)の作曲家のピアノ・ソナタ。バルトークは常々「ピアノは打楽器だ」と言っていた、そしてそれを体現したかのようなソナタとなっているという。


幼い頃に3年ほど日本にいたマサルはその時にアーちゃんに連れられてピアノ教室に通ったのだが、このコンクールで再会する。彼は再会した彼女に恋愛感情を抱いているし、彼女も憎からずは思っているのだけど、それ以上には発展しない。

アーちゃんは塵とたまたまピアノ・セッションを行ない、その次の日(第3次予選)では人が変わったようになるほどの内的成長を遂げるだけのインスピレーションを受ける。天才少女の名をほしいままにしていた彼女は、母親が急逝すると表舞台から去ってしまっていた。このコンクールで復活できるのか?

明石くんは28歳という年齢で、家庭もあり、仕事もありでの挑戦だったが、コンクール挑戦と他のコンテスタントの演奏で得るものは多かった。音楽家として起つ決心ができたようだ。

「爆弾」塵くんは周囲の喧騒などどこ吹く風、といった様子で、とにもかくにもピアノを弾くのが楽しくてたまらない。何の機会であれ、ピアノさえ弾ければ大満足、特にいいピアノならご機嫌なのだ。彼の師はホフマンという世界的な存在だった。審査員が動揺したのは、ほとんど弟子をとらないホフマンが塵を弟子にし、亡くなる前に推薦状まで書き、塵を「ギフト」だと言っていること。他のコンテスタントのみならず審査員も激しく揺さぶられ、新境地へと導かれる。


多分、この4人をひとりずつもっと深く描くこともできたのだろうが、そうはしていないのがこの作品の一つの特徴だろうか、と思う。読者もコンクールの一聴衆で、ちょっと事情に通じている、というスタンスがいいのかどうかは読む側のお好みかもしれない。


もう一つの特徴は、恩田さんの音楽の捉え方で、演奏者がどこか高いところで、演奏している自分を客観的に見ていたり、演奏前からピアノの中、あるいは周辺に何かがいると確信して演奏にはいったり、演奏の向こうに自然が感じられる、と表されている場面がいくつもある。

そういう時に、観客を熱狂の渦に巻き込むような名演が誕生している。ただただ技巧的に完璧なだけでは本選まで残れない。そこにプラス・アルファの何かが必要なのだが、2次予選で落とされてしまった女ラン・ランことジェニファ・チャンはそこのところが分かっていないから落選した(ラン・ランは中国出身の世界的ピアニスト)。それをもっと考えるように、と審査員の一人は彼女を諭す。他のコンテスタントが世の中にラン・ランは二人いらない、という場面が2度あって、それもうなずける話だな、とも思う。

音楽の神が微笑むか、愛するかしてくれた演奏者こそが超がいくつもつくような一流の音楽家として認められ、驚きをもって迎えられ、あるいは反発されるのだけど、実は最も陶酔感にひたっているのは本人である、ということなのかな? 読みながらそれを何度か感じた。


三次予選に残った12名の内、韓国出身が4名もいるのだが、本選(内2人が残った)までは彼らは一顧だにされていないのも面白いというか、気の毒というか…。


音楽を文章で表現するのは難しいと思う。恩田さんもすごいとは思うけど、中山七里さんの『さよならドビュッシー』や『いつまでもショパン』でのそれは頭抜けていてそれにはちょっと敵わないかも(ただし、両作ともミステリーなのだが、ミステリーとしてはどうなの? と思う)。


目次を眺めるのも楽しい。クラシックの名曲が使われていたり(「ワルキューレの騎行」とか「春の祭典」そのほかいっぱい)、映画や(「ショウほど素敵な商売はない」「オーケストラ・リハーサル」「恋の手ほどき」「鬼火」etc.)「ずいずいずっころばし」なんかもある。それぞれが内容とリンクしているのは言うまでもない。


それにしても『蜜蜂と遠雷』というのはなかなかいいタイトルではないか。遠雷のシーンはごくわずかだが、亜夜(アーちゃん)が静かに佇んでいる中で遠雷の音を聞き、寒さとともに何かを感じて次のステージに向かう印象的な場面が思い出されるとともに、その前とその後ともいろいろと思い出させてくれる。

最早だれが一位でもいいと思ってしまう本選だが、結果については最後のページに載っている。全体の流れからいけば納得の順位だろうなどと、審査員でもその場に居合わせた聴衆でもない者が思ったりするのだから、魅力ある作品だったと改めて思ったりする。

+5あり! +3あり! +1あり!
【 読了日: 】
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メモ
塵という少年が紡ぎだす音楽がどのようなものかは想像するしかないが、指揮者で相当な変わり者だったカルロス・クライバーの面影が何度となく脳裏に浮かんだりした。
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