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書誌データ

小説・エッセイ
岩波書店
2017年 04月 発売
322P
9784000014083

内容紹介

欠けていた月が満ちるとき、喪われた愛が甦る。第157回直木賞受賞。

瑠璃も玻璃も照らせば光る

4

直木賞受賞作。正しくは直木三十五賞、というのだそうだが、大衆小説作品に贈られる。

大衆小説と純文学を峻別する基準が何なのかは知らないし、その境界線がどこに引かれるのかも分からない。

従ってこの小説が直木賞に相応しいかどうかを判断することなどできないのだけど、そういう「肩書き」を全部取っ払ってみても、十分に楽しめるというか、入り込めるというか、ワタシの日常を考えてみることができるような小説だった。


タイトルの「月の満ち欠け」は、一度欠けた後、また満ちていく月のように、たとえ命を落としても、もう一度生まれ変わって愛しい人に会いに来ようとする、その意思の力を示している。

だから、一度ではない。二度でも、三度でも生まれ変わって、また会いにくる。

なぜなら、あなたを愛しているから。


瑠璃という女性が、三角(みすみ)と会い、既婚者でありながら彼と愛し合い、事故で亡くなる。

そしてこの物語の最初に登場する小山内という老境にさしかかった男性の娘の名が瑠璃であった。その瑠璃は、18の時に三角に会う約束をしながら、自動車事故で母親の梢(こずえ)とともに帰らぬ人となる。

そして今、小山内が東京ステーションホテルの2Fカフェで会っている緑坂ゆいの娘の名は「るり」、7歳。緑坂ゆいは小山内の娘・瑠璃の親友で、今は女優として活躍している。

本当はその場に三角も参加する予定だったが、来ていない。


物語は11時に始まり、午後の1時には終わりを迎えるのだが、その間に小山内の若い頃から現在までの時の流れが、小山内や三角や、三角と愛し合った瑠璃の夫であった正木、そして彼が心身ともに荒んだ後に雇われた工務店の若社長の娘・希美(のぞみ)の物語が挿入され、「月の満ち欠け」の実際を色濃く描き出している。


そして八戸に帰るべく東北新幹線のホームに向かう頃には、生まれ変わりは何も瑠璃だけではないはず、との緑坂の言葉に、妻と娘を事故で亡くした小山内と8年前から親しくしている荒谷清美と娘のみずき、特にみずきとの縁を考えていくようになる(妻の名はこずえ、そしてみずき と3文字の真ん中の字が「ず」であることを理由として)。

更に、緑坂るりは、ランドセルを背負ったまま、三角の会社を訪れ、追い出されそうになる時に、当の三角に助けられ「瑠璃さん、ずっと待っていたんだよ」と言ってもらえるのだった。


作中何度か出てくる「瑠璃も玻璃も照らせば光る」という格言というかことわざは、すぐれた素質や才能がある者は、どこにいても目立つというたとえ、ということなのだけど、運命の愛(オビの言葉)に導かれれば、人には愛する人がわかるということかも知れない。


もう、あとどのくらい生きられるのか、というようなことを考えるような年齢になってまで、「運命の愛」などというつかみどころのないものと、生まれ変わりとかいう怪しげなことと、瑠璃と玻璃とを頭の中でグルグルグルグルさせている自分が、とても年齢相応とは思えなく、そうは言いながら、なぜかちょっとドキドキしてしまうのはどうしてだろう。

(☆は4.5くらい…)

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