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書誌データ

小説・エッセイ
中央公論新社
2017年 08月 発売
563P
9784120049996

内容紹介

埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ。世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とは―!?

死体は、なぜ、名駒とともに埋められていたのか?!

4

この作品、二人の刑事が、ある場所に向かう場面から始まる。
二人が目指していたのは、山形県天童市内の、あるホテル。
そこでは、将棋のタイトル戦である、竜昇戦の第七局が行われることになっていた。
若き天才棋士・壬生芳樹竜昇(24歳)に挑むのは、プロ棋士の養成機関である奨励会を経ず、実業界から転身して特例でプロになった、東大卒のエリート棋士・上条桂介六段(33歳)。
もちろん、刑事たちは、将棋観戦に訪れたわけではない。
彼らが追っているのは、上条だったのである。

平成6年、埼玉県の大宮にある山の中から、白骨死体が発見される。
注目すべきは、その死体とともに発見された、将棋の駒だった。
その駒は、非常に貴重なもので、値段をつけるとしたら、およそ600万だという。
事件を担当する石破と佐野の二人は、7組しか作られなかったというその駒のうち、一組だけ、行方がわからなくなっているという情報をつかむ。

この作品は、事件の謎に迫る最大の手がかりとなる名駒の行方を追う刑事たちの話と、上条の過去の話が、並行して描かれていく。

IQ140という上条は、子どもの頃から将棋の才能を開花させていたのだが、そんな彼が、なぜ、奨励会に入会しなかったのか?
そしてなぜ、年商30億を達成し、一躍、ITベンチャーの旗手となった彼は、突如として実業界を引退し、将棋の世界に挑んだのか?
そこには、母親の死、父親による虐待、ある老人との出会い、そして、歴代最強と謳われた真剣師との関わりという、彼の過去と、事件へのつながりが隠されていたのだった。

上条の過去の話は、それだけでも読みごたえがある。
そんな上条に、駒の行方を追う刑事たちが、ジワジワと近付いていく展開は、ページをめくる手が止まらなくなるほどだった。

タイトルにもなっている「向日葵」には、3つの意味がある。
亡くなった母親のイメージ、画家のゴッホ、そしてもう一つは・・・

終盤で明らかになる、驚きの真実。
それが、「向日葵」という花につながる母親のイメージ、そして、ゴッホという画家と上条が重なり合っていくという作りが、非常にうまいと思った。

凄腕の刑事だが、人間的にはかなり問題のある石破と、プロ棋士を目指し、奨励会に入会したものの、年齢制限のために夢を断たれた、新米刑事の佐野のコンビも、いい味を出している。

冒頭から、一気に惹きこまれ、事件の真相が気になり、最後まで、読むのが止まらなくなってしまうほど読みごたえのある作品だったのだが、肝心の、事件の部分のインパクトが、若干弱かった気がするのが惜しまれる。

この作品、文字ではなく、やはり、映像で、駒の動きを見たいと思った。
是非、映像化してほしい作品である。

最近は、すっかり将棋ブームだが、天童市のある、山形県在住の柚月さんだけに、単に、ブームに乗った、安易な作品ではないというのがよかった。


余談だが、私は、将棋については、駒の動かし方くらいしか知識がないのだが、最初の、駒の並べ方にまで流派があるとは、驚きだった。
+5あり! +3あり! +1あり!
【 読了日: 】
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