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書誌データ

新書・文庫
文藝春秋
2014年 08月 発売
188P
9784166609826

内容紹介

戦前の最先端都市、大連で少年期を過ごし、その後の熊本への引揚げですべてを失い、戦後を身ひとつで生きぬいてきた著者。「自分で自分の一生の主人であろう」としたその半生をもとに語られる幸福論。

目次

序 人間、死ぬから面白い/1 私は異邦人/2 人生は甘くない/3 生きる喜び/4 幸せだった江戸の人びと/5 国家への義理/6 無名のままに生きたい

無名のままに

4

決して無名とはいえない著者の「無名である」ことへの思いをつづった本書は、実をいうと、発売当初に買ったまま放ってあったものである。
朝日新聞の往復書簡という連載で、2か月、互いに4通ずつ、女優の酒井若菜とともに手紙を掲載していたのが、著者の渡辺京二であり、大連で暮らしていたことなど、その生い立ちを語っていたことで本書を思い出した。

本の著者をあまり気にしないというか、名前と人を一致させるのが苦手なわたしが著者を知ったのは、中学生時分から通い詰めた本屋の一角である。
大きいとはいえないが、決して小さくもないビルのフロアに、常に平積みされた、なんとなく心にかかる表紙を見せていたのが「逝きし世の面影」で、厚みに躊躇しつつもえいやっと手に取ってみたのは数年前だ。

「逝きし世の面影」は、外国人の目を通して描かれた様々な資料を紐解きつつ、現代とは断絶した維新前後の日本について、語る。それを大連で育った自分だから持ちえた半分の異邦人としての視線が可能にしたという。
それはどこか、人のたどった輪郭線をなぞるように見える。
日本に浸かった日本人であれば、境界はあいまいなものを、異邦人の目をもって、外国人の目にした境界線をたどることができる。それらを集めてあとは色を塗るかのようにしていけば、かつての日本の姿が浮かび上がる、そういう手法なのだろう。
つい心地よくなり、途中からでも読みだすと気が付くと時間がたち……ということになりかねないのだけれども、リビングの本棚に出しっぱなしにしてしまっている。言葉が絵に描ければ、そのまま飾っておきたい。


何かを突き詰めるとついてくるものである「名」を求める人生ではつまらない、そもそも、際立った才能や「有名」とは、平凡で無名な中の一握りだからこそのもので、追い求める必要はない、そういう趣旨は、すでに題名から見えるだろうから置いておく。

それよりもまず、「自分中心の世界」という世界のとらえ方に興味を覚える。
もちろん、これは、よくいう「自己中」ではなく、自分が中心として世界は広がっているという、当然の在り方。自分が中心ではなく末端であるとしたら、つまりは先端ということでもあり、その先に、環境というものが全くない虚無が隣接していることになるのは、恐ろしいことだ。
そして、「自分中心の世界」というのは、禅語でいう「主人公」ということなのかと思う。

しかし、そうとらえたときに、かつての日本人と今現在の日本人と、何が違って、個人主義になっているのかといえば、人との距離なのかとも思う。
大連から引き揚げ後、6畳間に7人が寝泊まりしていたという話にあるように、かつては個人が密接し、寝ていれば、互いに触れあうこともあり、互いの立てる物音がそばにある。そうした中では、当然、自分と他者とを切り離すべくもなかったろうし、木や紙でできた日本の家屋は、たとえ、別の家であっても、多くの物音を互いにやり取りすることで、他者の主張を常としてきた。
しかし、コンクリづくり、個室、そうした個を切り離す距離が、互いの重なりを遠ざける。
物質的な独立が個を孤立させ、自分は、他者とは違うということを際立たせる。

有名になりたい、という思いは、日本人の寂しさから出ているのではないか、と、わたしはそう考えてしまうのだ。
個が日本より分かれている欧米では、出会いの場面でスキンシップをとる。握手、ハグ、頬を寄せ合い、キスをする。
しかし、日本では、離れた場所からの会釈やあいさつで、生活の密接さとは裏腹に、接触行動を日常的に行わない。
互いの距離が離れていくにもかかわらず、接触行動を控えめにする日本人は、今、最大の寂しさの中にいるのではないだろうか。人から離れては、自分が何者か、確かめられないがために。

著者の半分の年齢に過ぎないが、残りの人生の選択肢がさほど多くは感じられない今になって、さて、もう、この世にさほどの未練もないのではないか、と思う。
それよりも、死に方を、きれいにとまではいかなくとも、見苦しくなくしておきたいものである。
最期は、黙って死んでいきたい。
先に、辞世でも用意しておこうか。
+5あり! +3あり! +1あり!
【 読了日: 】
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