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書誌データ

教育・資格検定
河出書房新社
2017年 08月 発売
326P
9784309025933

内容紹介

歴史の中に埋もれていた幕末以来の“娼婦たち”を掘り起こし、一方で“メリーさん”の周辺に生きる人々の人生を見つめた渾身の実録!時代とともに“ヨコハマ”の町が変遷していく姿を背景に、謎めいた“ハマのメリーさん”の鮮烈な全貌を描くドキュメント!

目次

第1章 メリーさんとは何者?/第2章 “ヨコハマ”から読み解く近現代/第3章 “メリーさん”の記憶/第4章 ローザとメリー/第5章 港のメリー・ヨコハマヨコスカ/第6章 二人の「マイウェイ」/第7章 伊勢佐木町ブルースが聞こえる/第8章 エピローグ

メリーさんがいた横浜

5

今でこそ東京から近い観光地で、おしゃれなデートスポットでも
ある横浜。でも、私が10代の頃は違った。横浜に長く住んでいた
友人の体験ほどではないが、そこそこに猥雑な街でもあった。

この友人と歩いていた時に一度だけ見掛けたことがあるのがメリー
さんだった。真っ白に塗った顔に白のドレス。私はきっとぎょっと
した顔をしていたのだろう。

「あれがメリーさん。恐くないよ。昔からこの街にいるおばあちゃん
だから」

メリーさんがいる風景。友人には日常のものだった。そのメリーさん
を題材にした映画の監督をしたのが本書の著者である。著者がメリー
さんの映画を撮りたいと思った時には、既に横浜からメリーさんの
姿は消えていたのだが。

対象不在のドキュメンタリーという手法がある。メリーさんに係わっ
た人たちのインタビューを中心に据え、メリーさんのいた横浜を、
それぞれのメリーさん像を描く。

生憎と映画は見逃してしまったのだが、本書はメリーさんの映画が出来
るまでのドキュメンタリーでもあり、幕末からの横浜裏面史にもなって
いる。

自分の体を資本にしなければならなかった女性たち。メリーさんもそん
な女性のひとり。時代の変化と共に彼女たちは商売から足を洗って行く
のに、メリーさんは老いても娼婦として横浜の街と共にそこにいた。

でも、街は変わる。横浜もみなとみらい地区などの再開発が進み、
戦後の猥雑さは薄れて行った。だから、メリーさんが姿を消したの
も必然だったのかもしれない。

住む家もなく、街を歩くメリーさんに暖かく接した人たちがいた。
その人たちだって世代交代する。徐々に出入り禁止になるビルが増え、
メリーさんの居場所も限られて来たのだろう。

メリーさんが横浜からいなくなったきっかけ、その後のメリーさんの
消息については本書でつまびらかにされているのだが、街が包み込んで
いた人を、街が追い出す。そんなタイミングでメリーさんは姿を消した
のではないだろうか。

そして、本書に登場するメリーさんを知り、係わった人たちの心遣い
が胸を打つと同時に、迷いながらもメリーさんの足跡を追う著者の
優しさが行間から伝わって来る。

外国人専門、それも相手にするのは将校のみ。気位の高い娼婦だった
というメリーさん。帰国したひとりの将校を待ち続け、横浜に居続け
たとの説もある。私はこの説を信じたい。

メリーさんがいた横浜は、もうあの頃の横浜ではない。今の横浜に
メリーさんの居場所はないのかもしれない。それでも、ひとりの
老娼婦がいたとの記憶を記録した本書は貴重だと思う。

戦後、メリーさんのような女性は多くいたのだよね。ひとりの老娼婦
の向こう側には何人もの「メリーさん」がいたのだろう。
+5あり! +3あり! +1あり!
【 読了日: 】
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このブクレポへコメント

こたろうさんがこのブクレポにコメントしました

こたろう
こたろうさん2017-10-05 20:33:04

三重の津にもメリーさんはいました。見たことはないのですが、戦争で夫を亡くした方だと教えてもらった覚えがあります。当時もうおばあちゃんでしたがキレイな人だったと。

sasha
sashaさん2017-10-06 19:48:12

>>こたろうさん

日本各地にメリーさんがいたようで、横浜のメリーさんは全身真っ白でしたが、緑のメリーさん、赤のメリーさんもいたようですね。

こたろう
こたろうさん2017-10-07 05:02:32

津のメリーさんは赤だったそうです。

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